哲学 / 読書の時間
三日坊主のしおりは、そのままでいい
途切れた読書を再開するとき、どこから読み、どの本を残すか。読みかけの一冊との付き合い方を考えます。
本を開くと、二か月前のレシートがはらりと落ちる。日付の横に牛乳と玉ねぎ。読んだ内容よりも、あの日立ち寄ったスーパーの売り場のほうが、よほど鮮明に浮かぶことがあります。「また途中でやめたな」と思ったら、その前に、読み進めたページにも目を向けてみませんか。レシートは、ここまで来た場所を今も覚えてくれています。
一ページ戻るか、好きなところへ飛ぶか
小説なら、しおりの直前の会話を数行読んでみます。誰と誰が話していたか思い出せたら、そこからで十分。身近なことをつづったエッセイ集なら目次を開いて、今の自分に近い題を一つ。「途中まで読んだから続きから」という約束を、自分で結び直してもいいのです。
アリストテレスは『ニコマコス倫理学』第二巻で、たとえば楽器を弾く人は、実際に弾くことで育つ、と説明しています。小さな行いを重ねる中で、人柄も育つ。彼が考えたのは、そんな「徳」の話です。それを読書に引き寄せて考えるなら、先月何日続いたかを採点するより、今日は気に入った一ページをもう一度開く。それなら、通学や通勤の電車を待つ数分でもできます。『ニコマコス倫理学』第二巻(英訳)
読み始めても、言葉がまるで入ってこない日もあります。そんな日は一段落の中から、気にかかった一語だけ拾って閉じてみてください。翌日その一語に興味が残れば続きを。別のことが気になっていれば、その本はしばらく棚へ。借りた本なら、読み切ることより返却日を優先していいのです。
書き込まない本に、続きを残す
細い紙片に「祖母が台所に来たところ」と鉛筆で書いて挟む。ページ番号だけよりも、次に開く手がかりになります。図書館の本なら、貼ったり折ったりせず、返すときに紙を取り出すだけ。手帳やスマホに本の題と一行を残しても、あとで借り直す日の目印になります。
もし道具を買い足すなら、紙のしおりは薄くて何冊にも分けやすく、読書ノートは本を返したあとも記録を手元に置きたい人向きです。記入欄の多いものを選ぶ前に、「書名と一言」だけでも、空いた欄を埋めなければと感じずに使えそうか、見本のページを見てください。好きな文章を書き写したいなら、余白の広い無地のノートが長く使えるかもしれません。
次の一冊は、読み続けたい場面から選ぶ
通学や通勤の短い時間に開きたいなら、一章や一話の長さを目次と試し読みで確かめてみます。言葉が難しくて止まった本なら、同じテーマの入門書や、説明のある版を図書館で探す方法も。厚さや評判だけで、今の自分に合うかを決めなくてよいのです。
紙の本は気になるページを行き来したい人の候補に、電子書籍は持ち物を増やしたくない人の候補になります。ただし、電子版の表示や使える端末はサービスによって異なります。試し読みをいつもの端末で開き、文字の見え方やページのめくり方を確かめてから選びましょう。
一冊買う前に、図書館で借りる、手元の本の別の章を開く、という選択も残しておきます。記録の方法から考えたい日は、夜の一行メモに合う道具の選び方も参考にしてください。
次に本を開いたとき、また同じ一節に目が留まるかもしれない。それも、その本との付き合いのうちです。今日のところはレシートをそっと戻して、おしまいにしましょう。
あなたの心が軽くなりますように。